

今まだこの仕事を続けているのは、ある一人のお客様との出会いがあったからです。今から8年前、私はスタイリストとして現場に立って6年目。全国に多店舗展開している大手美容室の駅ターミナル店で働いていました。大きい会社だったので、カットの仕方からスタイルやセットまで細かく決まっていて自分で自由にできるということがありませんでした。
当時、エクステや縮毛矯正、Wカラーなど特殊な技術に強い興味があった私は、そちらの方にもっと特化していきたいという強い思いがありながらも、サロンで決まっている方針ややり方はそれとは違うものでした。
その想いから6年目で地元の先輩が経営する地域密着型の美容室の店長職へと転職しました。しかし、そこで自分で自由にできるようになっても、満足は得られませんでした。確かに、エクステや縮毛矯正、Wカラーなど特殊な技術の腕を磨くことができる。しかし、どれだけ好きな技術をできても満足できない。それなら、「一体何のために美容師になったのだろう」と毎日悩むようになってしまいました。
ぱっと見たとき、そのお客様は白髪混じりで、40代後半くらいの女性に見えました。カウンセリングシートに記入していただいたとき、まだ30代前半であることを知り、少し驚きました。
はじめての来店で、カウンセリング時には少し緊張されているようでした。カットのみで来店されたのですが、スタイルについてご説明させていただくうちに、お任せしていただけることになりました。施術は、白髪を明るめにカラーをし、長年の悩まれていたクセ毛に縮毛矯正を施し、カットもショートボブの軽いスタイルにしました。
仕上げを終えると、見た目は一気に明るく華やかな雰囲気に変わりました。老けた感じもなくなり、実年齢より5歳以上は若く見えるくらいです。その日、そのお客様は満面の笑顔で帰っていかれました。
「髪型だけじゃない。美容師は、お客様の人生まで変えることができる」、そう強く実感しました。